日本には春と秋に訪れる年2回のお彼岸があります。伝統的に、お彼岸には墓参りや法事を行う習慣がありますが、お彼岸に向けてどのような準備をするべきか疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、まずお彼岸とはそもそも何かについてお話し、お彼岸に行うべきこと、お参りができない場合の代替案、避けるべきタブー等について詳しく解説していきます。
「お彼岸」の意味:年に2回あるのはなぜ?
現代日本のお彼岸の意義と起源
現代日本では、「お彼岸」とは年に2回、3月の春彼岸と9月の秋彼岸の期間を指し、この時期に墓参りや供養をして先祖を敬う日々とされています。国民の祝日としては、春分の日が「自然を尊び、生命を愛する」日、秋分の日が「先祖を敬い、故人を偲ぶ」日と位置付けられています。
「お彼岸」という用語は、元々仏教の「到彼岸(とうひがん)」という教えから来ており、現世の迷いや煩悩から悟りの世界へ至る修行を意味します。この「到彼岸」は、サンスクリット語の「paramita(パーラミタ)」を日本語に翻訳したもので、「彼岸に到達する」という意味を持ちます。また、音写語としては「波羅蜜多(はらみった)」とも呼ばれ、日本ではこちらの方が親しみやすいかもしれません。
このお彼岸の概念には、浄土信仰という中国からの影響も含まれています。春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さが等しく、太陽が東から西へ一直線に沈むため、この世界とあの世界が最も近づくとされ、故人を偲ぶ特別な意味を持つ日として日本で広く受け入れられるようになりました。
お彼岸日程の決め方
「お彼岸の期間はどうやって決められているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
「春分」とは、太陽が春分点を通過する現象を指し、これが発生する日を「春分の日」として暦上で定義しています。同様に、「秋分」とは太陽が秋分点を通過することを指し、その日が「秋分の日」となります。これらの日は太陽の位置により年によって異なり、通常、日本では3月20日か21日が春分の日に、9月23日が秋分の日に当たりますが、稀に9月22日が秋分の日になることもあります。
春のお彼岸は春分の日を含む前後3日、合計7日間とされています。秋のお彼岸も同様に秋分の日を中心とした前後3日を含む7日間を指します。
「春分の日」と「秋分の日」は日本の国民の祝日であり、毎年2月に開催される閣議で翌年の具体的な日付が決定されています。
2024年(令和6年)のお彼岸の日程
お彼岸の期間には、始まりの日を「彼岸入り」、中央の日を「中日」、終わりの日を「彼岸明け」と称します。
2024年(令和6年)の春彼岸は、3月17日(日)から3月23日(土)までの7日間です。
- 春彼岸入り:3月17日(日/先負)
- 中日(春分の日):3月20日(水・祝/赤口)
- 春彼岸明け:3月23日(土/先負)
同年の秋彼岸は、9月19日(木)から9月25日(水)までの7日間となります。
- 秋彼岸入り:9月19日(木/赤口)
- 中日(秋分の日):9月22日(日・祝/先負)
- 秋彼岸明け:9月25日(水/赤口)
お彼岸期間中の休日とシルバーウィークの日程は?
お彼岸には特別な休日は設けられていませんが、9月のシルバーウィークに秋のお彼岸が重なることが多くなっています。
2023年は、敬老の日が9月18日(月)で、お彼岸直前の9月16日(土)から18日(月・祝)までが3連休となりましたが、お彼岸自体の期間中は9月23日(土・祝)と24日(日)の2連休のみでした。土曜日が祝日の場合、振替休日は設けられないため、2023年のシルバーウィークは一度だけの3連休となりました。
今年2024年の敬老の日は9月16日(月)ですので、お彼岸直前の9月14日(土)から18日(月・祝)まで3連休となり、続いてお彼岸期間中は9月21日(土)・22日(日・祝)・23日(月・振替休日)の3連休があります。このため、2024年のシルバーウィークは前年と比べて若干恵まれた日程となり、お彼岸前の週末にお墓参りを行う方が増える可能性があります。
お盆とお彼岸の違い
お盆は、主に新暦8月13日から16日までの4日間にわたり行われ、この期間中にご先祖様の霊を迎えて供養する伝統的な行事です。
この習慣は、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)や中国の儒教に由来する伝承と、日本の祖先崇拝の伝統が融合して形成されました。
一方、お彼岸は、春分の日と秋分の日を中心に行われる、先祖供養を目的とした行事です。
お盆と異なり、ご先祖様を自宅に迎えるのではなく、主に中日を含む期間にお墓参りを行うのが一般的です。
お彼岸は日本の先祖崇拝の伝統に仏教の思想が加わって成立したもので、中国のお盆とは異なり、日本固有の行事です。
また、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる6つの徳目に従い、彼岸へ到達することを目指し、精進する期間ともされています。これは「波羅蜜多(はらみった)」という言葉が示す通り、仏教の教えと深く結びついています。
お彼岸にお墓参りをするのはなぜ?:由来
お彼岸は、春分と秋分を中心とした期間に行われる日本の伝統的な行事です。春は3月、秋は9月にお墓参りをする風習は、日本文化に深く根付いています。
「お彼岸」の語源は、サンスクリット語の「パーラミター」であるとされています。この言葉は「完成する」や「成就する」という意味を持ち、仏教の教えでは、欲や煩悩に満ちた現世から悟りの世界へ至ることを象徴しています。
日本における「お彼岸」は、この悟りの世界を象徴する「彼岸」と、煩悩に満ちた現世を表す「此岸」の概念から派生したものです。
春分の日と秋分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈むことから、彼岸と此岸が最も近くなると考えられ、この時期に先祖供養を行うことで、故人の冥福を祈り、同時に私たち自身もいずれ迷いのない境地に到達することを願います。
お彼岸にお墓参りを行うのは、彼岸と此岸が交流する機会として、ご先祖様との絆を確認し、感謝の意を表す行為とされています。
お彼岸のお墓参りは日本特有の習慣
お彼岸におけるお墓参りは、日本独自の風習です。仏教の発祥地であるインドや中国では、お彼岸という行事自体が存在しません。
仏教の創始者である釈迦は、霊魂の存在を認める教えを持っていませんでした。釈迦によれば、人は死後49日の間に新たな存在へと生まれ変わる(輪廻転生)か、輪廻のサイクルから解放されるかのどちらかの道を辿るとされています。
したがって、ご先祖があの世に留まり、お盆やお彼岸にこの世に戻ってくるという考え方は、釈迦の元々の教えからは生じたものではなく、日本に仏教が伝わる前から存在した、日本固有の先祖崇拝の信仰に基づいています。