自然には存在しない青色のバラを実現するには、現在染色技術に頼る以外に方法がない状況です。
バラの花びらには、青色を生成するデルフィニジンという色素の構成要素が欠けているため、染色や特定の加工法によってのみ青いバラを作り出すことが可能です。
この技術には、遺伝子の改変を用いたものと、吸水させて色を付ける方法の二通りがあります。
遺伝子改変による青バラは、赤やオレンジの色素を含む成分を減少させた品種改良が行われた結果です。一方、色を物理的に付け加える方法では、バラに直接色を施します。
着色による青いバラ
青いバラを作るための着色には、実際に2種類の手法が存在します。
通常、白やクリーム色のバラに対して物理的手段を用いて「青いバラ」に変える作業が行われます。この着色手段には、大きく分けて「表面着色」と「吸上げ着色」の二つがあります。
「表面着色」では、スプレーや液体を使って花の表面に直接青色を施します。一方、「吸上げ着色」では、青い色素を含んだ水を花が吸水する際に使用し、茎を介して花全体を内側から青く染め上げます。
これらの方法は、使用される花の種類(生花やプリザーブドフラワーなど)に応じて選ばれます。
生花の青いバラは吸い上げ着色
生花用の青いバラの製作には、「吸上げ着色」法が採用されています。
花びらには呼吸を助ける微細な気孔が存在し、これらに直接色素を塗布すると気孔が塞がり、花の鮮度が著しく損なわれます。
この問題を避けるため、着色液を花の茎に吸い上げさせる方法を用いています。この技術では、色素を花の茎から吸収させ、内部から徐々に青く染め上げることで、花びらへの直接的な影響を避けています。使用される着色剤は、茎の導管を詰まらせずに流れる適切な粒度を持ったものを選んでいます。
青色の着色が葉脈にも現れる
青いバラの製作において、花弁が青く染まる過程で、不可避的に導管を通じて葉にも色が伝わってしまうことがあります。
葉には光合成を助ける緑色の葉緑体が含まれており、このため青色の着色は葉では目立ちづらいですが、葉脈を通じて青色が微細に表れることがあります。これは青いバラを作成する際の小さな課題とも言えますが、同時に着色が全体に効果的に施されている証拠とも解釈できますので、理解いただけると幸いです。
バラ自体の香りはそのまま保持される
「吸上げ着色」技術を用いても、バラ本来の香りを保つことが可能であると確認されています。
プリザーブドフラワーは直接の表面塗装
加工されたプリザーブドフラワーの製造過程では、「表面着色」技法が採用されています。この方法では、プリザーブドフラワーを作る際の漂白(水分の置換)と色付けの段階があり、色付けは花びらの表面に直接行われます。この表面塗装により、花びらにはマットで光沢のある仕上がりを与えることが可能です。
最も青色に近いバラ「アプローズ」