過度に緊張することは、さまざまな場面で支障をきたすことがあります。
例えば、初めて会う人との会話や、興味を持っている異性とのやり取りの際に、心臓が激しく鼓動したり、息が速くなってスムーズに話せなかったり、重要な試験やプレゼンテーションで緊張して能力を十分に発揮できないことがあります。
家でリラックスできないと、睡眠も浅くなり、十分な休息が得られず、次の日には最高のパフォーマンスが出しにくくなります。
練習時には問題なくこなせるのに、実際のときに緊張してしまい、期待に応えられない人もいます。
実を言うと、私もかつては緊張しやすいタイプでした。
初めてカウンセリングの講師を務めた際、約30人の参加者の前で、私の緊張が明らかに表れてしまいました。その時のフィードバックで、「緊張が伝わってきた」と指摘されたことがあります。
しかし、これまでの経験から学んだ、心理学を取り入れたリラックス方法をご紹介します。人と接する際や公の場で話す時に緊張しやすい、声が震えがちな方に、これらの方法を試していただければ、確実に改善できるでしょう。
以下に紹介する内容は、相互に関連しているため、順を追って読むことを推奨します。
自分の真の目標を意識することの重要性
緊張から不快な経験をしてしまうと、緊張を避けたいという気持ちが強くなります。
その対策として最初に考えるべきは、「なぜ緊張を避けたいのか?」という根本的な目標を明確にすることです。なぜなら、単に「緊張しないこと」自体が目的ではないからです。
真の目標は、もっと具体的な成果にあります。例えば、円滑に会話を進めること、プレゼンテーションを成功させること、舞台や演劇で観客を感動させることなど、その他さまざまな目標が考えられます。「緊張したくない」という思いは、これらの目標を達成するための手段に過ぎません。
この目標に対する情熱が強ければ強いほど、「上手くこなしたい」という願望が強く表れることになります。実際、「上手くこなしたい」という願望がなければ、「緊張したくない」という感情も生まれません。
緊張を避けたいと思うこと自体が、実は高い向上心の表れであると理解することが大切です。
「緊張する自分は不十分だ」と自己批判するのではなく、「緊張することは、成長しようとする自分の証」と肯定的に捉えることで、パフォーマンスにも好影響をもたらすことができます。
緊張を肯定的に捉える
次に提案する方法は、積極的に緊張を受け入れることです。
緊張は避けるものではなく、目標達成の過程で自然に伴うものです。重要なのは緊張を回避することではなく、設定した目標を達成することです。緊張自体が目的を果たす上で障害になるわけではありません。
緊張が全て悪いわけではなく、実はそれは重要な反応の一つです。緊張することで思考が鋭くなり、また筋肉が引き締まって必要な時に力を発揮できるようになります。
適度な緊張は、自らの能力を最大限に引き出すために必要な要素です。
私自身も、10年の経験を積んだ今でも、講義をする前は緊張しますし、私のメンターであるカウンセラーも、セッション中にわずかながら緊張していることが感じ取れることがあります。
例えば、面接を行う立場で、全く緊張感を見せずにリラックスしすぎている応募者がいた場合、その人の意欲に疑問を持つかもしれません。
緊張感があるからこそ、迅速かつ正確な判断が可能になります。
肝心なのは緊張を無くすことではなく、「緊張が周囲にあまり感じられないようにすること」です。これを実現するためのアプローチをご紹介します。
身体の状態への対応
緊張を和らげるための具体的な方法です。
まず大切なのは、自分が緊張していることを自覚することから始めます。
意外と見過ごされがちですが、たとえ傾聴スキルを磨いていたとしても、自分自身が緊張している状態にあることに気づかない人が少なくありません。自覚するために注目すべき3つのポイントがあります。
呼吸を調整する
最初のポイントは、「呼吸」に注目することです。緊張している時は、呼吸が浅くなる傾向があります。また、声も喉から押し出すように出ることが多くなります。呼吸が浅い、声が喉から出ていると感じたら、それはリラックスするための呼吸法を試す良い機会です。
緊張を感じたら、まずは深く息を吐くことから始めてみてください。深く息を吐くことで、自然と深い呼吸を促すことができます。
リラックス時の呼吸は深く落ち着いているため、この呼吸法で心も体もリラックスした状態に導くことが可能です。
身体の緊張を解放する
次のポイントは、「身体」の状態に注意を向けることです。緊張していると、肩が上がったり、手足が無意識に力んでしまうことがあります。
これに気づいたら、意識的に身体の力を抜いていくことが重要です。これは、リラックスしている時の身体の状態を意識的に作り出すことで、精神的なリラックスへと繋がります。
さらに、傾聴を実践している際に緊張すると、自然と相槌を打たなくなることがあります。会話中に「はい」や「うん」といった反応が減ってしまったら、それを意識して取り戻すことで、会話の流れをスムーズにし、緊張を軽減できます。
緊張への慣れを促す
第四の戦略は、非常に直接的です。
それは、緊張を経験する機会を積極的に増やしていくことです。
実際には、緊張感にも慣れる側面があります。自分自身の例を挙げると、初めて講義を担当した時の緊張と、現在感じる緊張とは、その性質が異なります。
「緊張する経験を増やす」という目標に対して、スピーチなどを例に取れば、最初は3分から始めて徐々に5分、10分と時間を延ばしていくのが効果的です。
できるだけリスクが低く、始めやすい状況からスタートし、徐々に慣れていくことがポイントです。
また、緊張していてもその場を離れずに立ち向かうことの重要性も忘れてはいけません。緊張してもそれが命に関わるわけではないので、逃げ出すことなくその場に留まる勇気も必要です。緊張を感じつつも、逃げずに以下のステップに取り組むことが大切です。
相手への意識のシフト
第五のアプローチは、スキルに近いものであり、「緊張を感じた際に、自分の意識を相手に向ける」というものです。
この方法の要点は、自分自身の緊張感に焦点を当てるのではなく、会話や活動の本来の目的、そして相手に自分の注意を集中させることです。
たとえば、公の場で読書をしていて顔が赤くなると、自分の見た目の不格好さに焦りを感じ、顔の赤みをどうにかしたいと思ううちに、ますますその緊張や自意識に意識が集中してしまいます。
緊張や恐怖に意識を強く向けると、その感情は増幅される傾向があります。また、公衆の前で書く際に手が震える「書痙」という現象も、手の震えに意識が集中することで悪化する一例です。
最適なパフォーマンスを発揮するためには、緊張を受け入れつつ、意識を目的や相手にシフトすることが重要です。例えば、「相手に情報を伝えるために正確に文字を書く」や「相手の言葉や表情に注意を払う」などです。
実践的には、何かに緊張した場合、自分自身の感情に意識を向けるのではなく、相手の「表情」や「呼吸」、「態度」、「話の内容」に焦点を当てます。相手の顔や目の表情をしっかり観察することで、意識を相手に移すことができます。
この手法は様々な状況で応用可能であり、実践することで、自身の緊張を忘れて、相手に対して最良のパフォーマンスで接することができるようになります。
ただし、意識を相手に移すには特定のコツが必要で、次にそのコツについて詳しく説明します。
事前の準備による自信の構築
相手への注意を効果的に向けるために、一つ重要なポイントがあります。
それは、「緊張する状況で実行する行動を事前に入念に練習しておく」ということです。
例えば、人の話を聞く場面では、反復や問いかけの技術を確実にマスターしておくこと、プレゼンテーションやスピーチにおいては、内容を十分に理解し、流暢に話せるよう準備すること、人との対面で緊張する場合は、会話のテーマや質問、さらにはその人についての事前調査を徹底することなどが挙げられます。
「緊張する状況で必要とされる行動」に対して十分な自信があれば、自分自身に集中する必要が減り、相手に対しての注意をより集中させやすくなります。
続く第七の戦略では、「緊張する状況で必要とされる行動」をより具体化し、明確にする方法に焦点を当てます。
事前準備と想定演習を行う
第七の対策は、不安を抱える状況での事前準備と想定演習を徹底することです。
たとえば、プレゼンテーションが緊張の原因である場合、事前に開始時間、出席者の迎え方、ドアの閉め方、開始の合図、さらには予想される質問に対する準備など、細部にわたるシミュレーションを実施することで、心理的な余裕が生まれます。
事前の下見は、不安を和らげる上で非常に重要です。特に未知の場所では、予期せぬ事態に対する緊張が高まりがちです。私も新しいデートスポットを利用する際には、事前に下見を実施し、無駄な心配から解放されるようにしています。
自己受容の重要性
完璧を目指すあまり、自分が上手くできないという現実を受け入れることができない場合、小さな失敗が積み重なり、結果的に大きな挫折へと繋がることがあります。
たとえば、試験や受験での緊張が原因で、特定の科目で思うように点数が取れなかった場合、「これで終わりだ」と感じてしまい、実際には得意な他の分野の問題も手につかなくなることがあります。
失敗や不得意なことへの挑戦は、成長の過程で自然なことです。できないことに挑戦する勇気を持っている自分を肯定的に捉え、それを誇りに思うことで、次への一歩を踏み出しやすくなります。
声や体が震えてしまう状況で
緊張により声や体が震えるとき、恥ずかしさを感じたり、自分の震えに注意が集中してしまうことがあります。そんな時は、以下の点に特に焦点を当ててみてください。
- 自分の本来の目標に集中する
- 意識を相手に移す
これらを心がけることで、緊張を乗り越えることができるでしょう。
緊張性格についてのFAQ
緊張しやすい性格の特徴は何ですか?
完璧を求める性格の人は、特に緊張しやすい傾向にあります。理想を高く持つことで、それに伴うプレッシャーも増大します。小さな間違いも気になってしまい、緊張時に感じる心拍の早まりや声の震え、手足の不安定さをなくしたいという強い願望が、緊張感をさらに強める原因となります。しかし、この緊張感を上手く受け入れることができれば、それが強みに変わることもあります。
なぜ過度に緊張してしまうのですか?
過度に緊張する主な理由は、緊張時に感じる不安や恐怖を消し去ろうとする心理が働くことにあります。緊張に伴う否定的な感情を避けようとするあまり、それらの感情に対する意識が高まり、結果的に緊張感が増してしまうのです。
これらはすべて人間であれば自然に生じる反応や感情であり、それらを排除しようとする意識を持つのではなく、自分の本来の目標に集中することで克服することが可能です。
過度な緊張の影響は何ですか?
過度に緊張することで、自分が持っている実力を十分に出せなくなることが主な問題です。家でさえも緊張が解けずに睡眠障害が続けば、自律神経のバランスを崩し、自律神経失調症を引き起こすリスクがあります。また、人と接することへの過剰な恐怖や外出を躊躇するようになることもあり得ます。
総括(まとめ)
- 真の目標への集中(緊張は高い目標を持つ証)
- 緊張を自然なものとして受け止める
- 深呼吸と身体の緩和に努める
- 緊張する機会を積極的に増やす
- 注目を対話相手へ移す
- 充分な練習により自信を築く
- 事前準備と想定練習の実施
- 不完全な自己を認める
- 緊張は成功への一歩であることを受け入れる
- 適度な緊張は成果を高める要因である
- 緊張は成長のために必要なエネルギーです。