2020年民法改正で敷金ルールはどう変わった?返還義務と原状回復のポイントを解説
はじめに|“なんとなく”の慣習がルールになった民法改正
2020年4月、民法の大幅な改正が行われ、不動産賃貸における「敷金」についても大きな変化がありました。
これまで曖昧だった敷金の定義や、返還・原状回復を巡るトラブルが多発していたことを受け、法律で明文化されたことで借主・貸主双方のルールが明確化されたのです。
本記事では、「敷金とは何か?」という基本から、返還義務や原状回復の考え方、敷金ゼロ物件の増加理由まで、分かりやすく解説します。
敷金の定義と役割
これまでの慣習では、「敷金」は“とりあえず払うもの”とされ、明確なルールが存在しませんでした。
しかし2020年の民法改正により、敷金の定義が法的に定められたことで、貸主と借主の認識にズレが起きにくくなりました。
🔍 敷金とは?
民法第622条の2によると、**「賃貸借契約において、借主が貸主に対して賃料その他の債務を担保するために預ける金銭」**と定義されています。
つまり、家賃の滞納や退去時の修繕費が発生した場合に、敷金からそれを補填し、残額が借主に返金されるという仕組みです。
敷金と礼金の違い
項目 | 敷金 | 礼金 |
---|---|---|
性質 | 預かり金(担保) | 謝礼金(返金なし) |
返金 | 一部または全額が返還される | 一切返金されない |
目的 | 家賃滞納や修繕の補填 | 貸主への謝意・契約料など |
敷金返還義務の明確化
これまでは「敷金がいつ返ってくるの?」「なんでこんなに引かれてるの?」といったトラブルが多数発生していましたが、民法改正により返還のルールが明文化されました。
✔ 返還のタイミング
退去時、借主が物件を明け渡した時点で、敷金は返還される義務があるとされています。
明け渡し後に精算を行い、未払い家賃や修繕費を控除した上で、残額が借主に返金されます。
原状回復義務の範囲
「原状回復」の考え方も、改正によって整理されました。
✔ 借主が負担すべきもの
-
故意・過失による破損(壁の穴、タバコのヤニ、ペットによる傷など)
-
通常使用の範囲を超えた汚損
✔ 負担しなくてよいもの(貸主負担)
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経年劣化による壁紙の黄ばみ
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日焼けによる床やクロスの変色
-
家具配置による軽度のへこみ
これは、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいても一貫した考え方です。
特約条項の注意点
契約書に「退去時にクリーニング費用を一律で徴収する」といった特約条項が記載されている場合は、それが優先されることもあります。
ただし、その特約が借主に不利すぎる内容であり、説明も不十分だった場合には、無効と判断される可能性もあります。
敷金トラブルを防ぐためのポイント
-
契約前に敷金・原状回復の内容を確認
特約条項や敷金の取り扱いを丁寧にチェックしましょう。 -
入居時・退去時に写真を撮る
状態を証拠として記録しておくことで、修繕トラブルを防げます。 -
立ち会い精算の際はその場で確認を
内容が不明な請求にはその場で質問し、納得いくまで説明を求めましょう。
敷金ゼロ物件が増えている理由とは?
近年では「敷金ゼロ・礼金ゼロ物件」が増加しています。
その背景には、入居者の初期費用を抑えたいニーズの高まりや、空室対策としての貸主側の戦略があります。
✔ 注意点
-
クリーニング費用が退去時に一括請求されるケースあり
-
修繕費用が想定以上に引かれる場合も
「敷金がない=安心」ではなく、契約内容の詳細をチェックすることが大切です。
まとめ|敷金は“曖昧なルール”から“法で守られる権利”へ
2020年の民法改正により、敷金のルールは大きく進化しました。
これまで“なんとなく”で処理されていた返還義務や原状回復が、法的に明確にされ、トラブルの予防が可能になったのです。
借主としては、契約書の読み込みと事前のチェックが重要。
貸主としても、法律に沿った対応を心がけることで、信頼関係を築くことができるでしょう。
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